2018年8月12日日曜日

【第863回】『さあ、才能に目覚めよう(新版)』(トム・ラス、古屋博子訳、日本経済新聞出版社、2017年)

 統計分析を一時的に生業としていた身としては、診断ツールに関する信頼性と妥当性の重要性を意識してしまう。ストレングス・ファインダーを受験する機会があり、十数年前との比較とはいえ、まったく同じなのか、変わるとしたら何か、興味深く受験してみた。

 結果は以下の通りである。

【2004年】
(1)学習欲
(2)最上志向
(3)目標志向
(4)未来志向
(5)内省

【2018年】
(1)学習欲
(2)調和性
(3)内省
(4)収集心
(5)分析思考

 過半数は不変かと予想していたため、信頼性を疑ってみたくも思ったが、結論としては、妥当性が担保されていて、信頼性も一定程度はある、と考える。強みは仕事や生活を重ねることで以前のものを基にしながらも日々更新するものであり、中長期的には変わるものだと考えるからである。このように考えた場合、以前の受験から今回の受験までの生活上の変化やキャリアの変遷をとらえれば、個人的には納得できるものであった。

 では、前回と今回との相違からの気づきについて記してみる。

 まず、みなさんの目を引き、かつ私を知っている方からは「当たり前」とも言われそうな点が、前回と今回とで変わらず堂々たる第一位を連覇した「学習欲」であろう。前回の受験時は、修士に入る前の段階で、日々忙しく勉強に飢えていて学びたい欲求が高かった時期なので納得だが、実は今回は意外な気がしている。知人・友人からは「学習欲がトップに来るのは当たり前」「自分のことをわかっていない」と笑われそうだが、そのようなものなのである。

 ただ、過去を顧みれば、高校生の途中段階で学ぶたのしさを感じてからずっと、学習欲求はたしかに落ちていない。そのインプットする領域が拡がったり、アウトプットすることで自分の血肉にしようと外部に保管するべくブログに著しているのは【収集】の為せるわざであろう。

 修士時代には、先行研究が途中からたのしくなってしまい、ひたすら論文を渉猟して自身の研究領域を同定するのに自然と時間をかけた。(おかげで期日までに論文を書き終えられるかヒヤヒヤした…)

 読書については、2005年頃から脳科学やデザイン、2010年頃からは小説(明治・大正期)・古典(特に中国)・宗教学、2015年頃からは現代小説・歴史といったように分野を拡げたのは【収集】と【学習欲】の合わせ技によるものだろう。

 次に興味深いのは二番目にランクした【調和性】である。

 前回受験した際、自分の書籍には、この【調和性】には×の印がついており、おそらく自分には強みとして存在しないものと自身で考えていたようである。当時はコンサル営業をしており、顧客との関係が主な業務であり、チーム内でも上司・先輩に教えていただくジュニアな状態だったから発揮されていなかったのであろう。

 その後、事業会社に移り、プロマネとしてミーティングで合意を得て前に進めること、チームメンバーの納得を得ながらチームとして成果を出すこと、HRBPとしてステイクホルダー間の利害を調整してファシリテーションすること、といった経験を経て、それぞれの場面での難局を乗り切る礎としてこの強みが顕在化したのではないか。研修時のファシリテーションを想起しても【調和性】があるのは納得的であり、悪く言えば、自身の弱みを生み出している強みでもある。

 三番目の驚きは、あれほど上位にいた「志向」系が軒並みベスト5から落ちている点で
ある。若い時分には理想家肌で向こう見ずな側面があり、それが三つの「志向」を強みにしていたのであろう。

 反対に、【分析思考】が前回入っていなかったことには驚きである。この十数年の間に、人事内での多様な職種や職場環境に挑戦しアジャストするうえで、論理性ほど役に立った汎用的なスキルもなかった。自身のそれまでの文脈から一歩引いた仕事が求められる中で、論理性がより強化されたのかもしれない。

【第172回】『「働く居場所」の作り方』(花田光世、日本経済新聞出版社、2013年)
【第252回】『組織内専門人材のキャリアと学習ー組織を越境する新しい人材像ー』(石山恒貴、日本生産性本部、2013年)
【第441回】改めて、キャリアについて考える。
【第538回】『ソース』(マイク・マクマナス、ヒューイ陽子訳、ヴォイス、1999年)

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