十数年前に初めて本シリーズを読んだ時、才能に溢れる天才投手・原田巧にとにかく魅了された。彼の人間的な成長のプロセスに興味を抱きながらも、脆さをもカバーして余りある圧倒的で傲慢な才能が好きだった。
投手とは、孤高で絶対的な存在だ。相手に一点も与えなければ少なくとも引き分けられ、自身で本塁打を打てばその試合に勝てる。野球というゲームを自律的に支配し得る唯一無二の特権的な役割である。
2016年7月3日に、大谷翔平投手がソフトバンク戦で一番打者として、初回の初球を本塁打し、投げては八回を零封した試合。投手を経験していればお分かりの通り、あの形は、少年時代に思い描く理想の一つであると首肯していただけると思う。
しかし、である。
今回読み直して驚いたのは、原田巧を取り巻く登場人物のバラエティの豊かさであり、それぞれの多様な魅力である。この最終巻では、多くの登場人物が一人称で物語り、その全てに感情移入させられた。
その意味では、クライマックスの一歩手前で終える最後のシーンは、最初に読んだときは拍子抜けであったが、今回は余韻を残す素晴らしい終わり方であった。また読み直したい。
【第875回】『バッテリー』(あさのあつこ、角川書店、2003年)
【第876回】『バッテリーⅡ』(あさのあつこ、角川書店、2004年)
【第877回】『バッテリーⅢ』(あさのあつこ、角川書店、2004年)
【第878回】『バッテリーⅣ』(あさのあつこ、角川書店、2005年)
【第879回】『バッテリーⅤ』(あさのあつこ、角川書店、2006年)
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