秀吉の実子である鶴松が亡くなり、秀次が家督を継ぐことになったことで、真田昌幸と信幸は、秀吉亡き後に家康を仰ぐ必要があることで一致する。しかし、秀頼が生まれたことで、真田の本家と分家とでは、その生き残り戦略が異なってくる。両者によるえも言われぬ緊張感が増し始める第五巻である。
すべてがわかったようなつもりでいても、双方のおもいちがいは間々あることで、大形にいうならば、人の世の大半は、人びとの[勘ちがい]によって成り立っているといってもよいほどなのだ。(52頁)
肝胆相照らして語り合えば、お互いを理解し合うことができる。たしかにそうしたことが起こることを否定するつもりはない。しかし、すべてにおいてそれが適用できるほど、私たちが生きる社会というものは単純ではない。むしろ、語っても理解されないことや、語れないことがあるからこそ、私たちの社会や人間関係は面白いのではないだろうか。
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