働くということ、キャリアをすすめること、生きるということ。これらと密接に関連する仕事というものを考える上で、私にとって本書における考察は一つの重要な拠り所となる。
仕事は自分をつくり、自分を社会の中に位置づける、欠かせないメディアである。(126頁)
日本人のみならず、外国人も含めて何人もにインタビューを行った結果として、著者が導き出した仕事観が端的に現れている。主体的に取り組むことによって仕事が自分自身を創り出すのであって、その反対ではない。そうした主体性の結果として社会における自分自身の価値が見出されることで社会性を持つことができる。そうしたものを媒介するものとして職業としての仕事が位置付けられる。
思いっきり単純化すると、「いい仕事」とは嘘のない仕事を指すのかもしれない。(173頁)
こうした主体性に伴う社会性を持った仕事という概念であればこそ、いい仕事というものは、自分に対しても、相手に対しても、社会に対しても嘘をつかない行為を指すのであろう。自戒を込めて傾聴したい部分である。
ではこのような仕事観に基づいて私たちははじめの一歩をどのように踏み出せるのか。難しく頭で考えるのではなく、動きながら、様々な感覚を持ってそこから得られるフィードバックを基にデザインしていくことを著者は重要視している。それを端的に表すのが、以下のインタビュイーの言葉である。
大切なのは、本当の問題を発見していく能力です。表面的に目につく問題点は、より根本的な問題が引き起こしている現象のひとつにすぎないことが多い。では、問題に深くアプローチしていく方法とはなんでしょうか。それは、机の上で頭を捻って問題を予測することではない。早い段階から、可能な限り具体的にテストし、トライ&エラーを重ねていくこと。これに尽きます。(80頁)
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