日本最古の歴史書を改めてカジュアルに学び直せる素晴らしい書籍である。原著を充実に、かつ大胆に意訳しながら古事記の概要を一通り読み進めることができる。
『古事記』の中でもっとも文学の香り高い物語として有名な章段である。たんなる兄弟争いのように見えるが、真のねらいは王権の拡張にある。(120頁)
いわゆる海幸彦・山幸彦の兄弟を考察した箇所である。古事記には、きょうだい間の争い印象を受けていたが、その争いの結果として既存の王権が及ぶ範囲が広がっていると捉えることは納得的である。<日本>の各地域を出しながら、そこでの争いや闘いを描くことで、<日本>の形成とそこにおけるアイデンティティの醸成を導き出す。これが歴史書としての古事記の位置付けなのである。
天皇の王威と神威とが対等だった時代の、いささかユーモラスな話である。やがて訪れる律令時代には、こんな話など生まれようもないほど、神威は下落していく。(244~245頁)
雄略天皇が一言主の大神に出会うシーンからの考察である。お互いにお互いを尊重する描写から、王権と神権とが対等であったとしている。さらに言えば、神権によって王権が正統付けられていると解釈できる。こうした物語によって、天皇の王権を権威付けようとしたのが歴史書の意義であろう。
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