経営戦略を歴史として学ぶ意義は何か。著者は端的に「似たような状況でもいろいろなことが起こりうるし、いろいろな戦略が有効である得る」(11頁)ことを学ぶことにあるとしている。
こうした著者の考え方には共感できるし、それに基づいた本書の編集のあり方にも好感が持てた。それぞれの経営戦略論どうしの関係性が簡潔かつ丁寧に書かれており、それぞれの論が生じてきた背景とその射程を理解することができる。
特に興味深く感じたのは、ゴビンダラジャンのリバース・イノベーションに関する以下の記述である。
リバース・イノベーションを盛んにするためには、ローカル(新興国・途上国側)に経営資源を投入し、権限を与えなくてはいけません。またそのローカル・イノベーションが先進国に逆流してきたときに発生するであろう、自社高級品との共食いも、甘受しなくてはなりません。
そのためにゴビンダラジャン(VG)は「現地に小さな機能横断型の起業組織をつくろう」と言います。そこに機能と権限と責任を与えようと。(294頁)
ここでは経営という領域を想定しているが、人事などのスタッフ部門においてもこの考え方を援用できるのではないかと邪推した。つまり、中央の本社人事が機能ごとに分かれることによって効率化が実現できる一方で、現場における新たな変化に流動的かつ柔軟に対応することが難しくなることが多い。そうした弊害を軽減するためには、部門人事において機能横断的に対応することが、直接部門への価値貢献に繋がるのではないか。ビジネスを取り巻く環境変化が激しくなればなるほど、そのようになると考えるのは考えすぎではないと思う。
【第573回】『経営戦略を問いなおす』(三品和広、筑摩書房、2006年)
【第281回】『良い戦略、悪い戦略』(リチャード・P・ルメルト、村井章子訳、日本経済新聞出版社、2012年)
【第70回】『イノベーションのジレンマ』(クレイトン・クリステンセン、翔泳社、2001年)
【第281回】『良い戦略、悪い戦略』(リチャード・P・ルメルト、村井章子訳、日本経済新聞出版社、2012年)
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