自らの職務を考えようとする時に読み返したくなる書籍は、研究者の先生方が著したものばかりである。具体的な事象を抽象化し、理論として練り上げられているために、自分自身が課題を抱えている際に、思考を深掘りしたり視野を拡げるために活用したくなる。
例を挙げればきりがないが、書籍ということであれば、平野光俊さん(『日本型人事管理』など)、中原淳さん(『職場学習論』など)、松尾睦さん(『「経験学習」入門』など)、石山恒貴さん(『組織内専門人材のキャリアと学習ー組織を越境する新しい人材像ー』など)、江夏幾多郎さん(『人事評価の「曖昧」と「納得」』など)といったところであろうか。
本書を読み直したいと考えたのは、日本企業に見られるジョブ・ローテーションの効果を高めるためには、どのような設えにするべきかを改めて考えたかったからである。本書では、社員個人が自律的にキャリアをすすめ行動することと、職場における社員同士の関わり合いが共存できることが示唆されている。本書での発見事実に基づけば、両者は逆転共生関係にあるのだから、片手落ちになったりやり過ぎてしまったりすると逆効果になりかねない点に注意が必要だ。
ではどのように考えることができるのか。
HRの職責としては、基本的には組織目線での人材管理を担うことになるわけであり、個人目線でのキャリア・ディベロップメントをフォローし、部署への丸投げを防ぐことが重要だろう。部署への丸投げ防止については、ローテーションが円滑に進むように職務を文言化することのサポートが必要だろう。また、人材の育成という観点では、MBOを通じて上司が部下の業務遂行の支援とともに、ジョブをストレッチすることを支援できるよう仕組みをメンテナンスすることも重要だ。
また、特定のタレントについては、その上司や部門長に対して職務アサイン自体を丁寧にフォローし、タレント側のキャリアビジョンを勘案したローテーションを検討することも求められると言えるだろう。これは、個人に迎合するのではなく、個人の意思を尊重しながら同時に組織の活性化やKPIの達成という組織目線の二つを統合する形であるべきだ。
と、このように、潜在的に考えていたことを、思考を進めながら文字にできるような活性剤になるので、学術書というものはうれしい。とはいえ、書きながらも自分が考えていることをスムーズに書けずにもどかしい思いもよくするのであるが。
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