仕事でしんどいなぁと思うことが続き、読みたい書籍が届くまでに少しだけ時間がある微妙な時期だったために、そういえばと本書を読み直した。今回で通読するのは実に五回目であり、論語に次ぐ多さである。
学術上の師が書いた書籍でも、さすがにもう新しい気づきはあまりないかと考えていたが、甘かった。しっかりと、気づきを得られる部分が随所にあり、また「こんなこと書いてあったのか」と驚かされる箇所も散見され、むしろ自分のこれまでの学びの不十分さを痛感させられた。
満足が自分の安定化を促し、それを守ろうとするところから、安住、そしてぶら下がりが始まります。キャリア作りにおける保守化・安定化現象です。(中略)
組織や職務の満足が本当に個人の成長につながるでしょうか。むしろ個人が成長するのは、厳しい現場に向き合った時です。それこそ、個人個人が、自己の成長に本気になり、当事者意識をもって真剣になるのではないでしょうか。(56頁)
この箇所を読んだ時は、恥じ入る思いであった。「しんどいこと=悪いこと」ではないのである。このように考えれば、現状に満足していることが必ずしも良いことではないことは間違いないだろう。私たちは心地よく働きたいと思いがちだ。しかし、その心地よさが現状への満足からくるものかどうかをチェックする必要があるだろう。
反対に、しんどいという心情がどこから来るかを考える必要もある。いわゆる「ブラック企業」のように、自分で何もできない外的な事象でかつ完全にコントロールできる要因がない中で生じるしんどさであれば、そこから避けようとすることは正しいだろう。しかし、冒頭の私のように、職務上のチャレンジの高さや、それに伴う他者からの厳しいフィードバックによってしんどいと感じるのであれば、それは避けるべきものではない。そのしんどさと向き合い、それを乗り越えようと、目的を意識して工夫を凝らしながら取り組むことで成長実感を自分で創り出すことができるかもしれない。
不安に対しての私の提案は二つ。一つは不安や不安の原因、そのインパクトなどに関心を向け、内省を始めてしまうより、むしろ、基礎的な各年代の、一般的な基準を自分なりにクリアすることへの努力をしっかりと行い、それにエネルギーを割くこと。そしてある一定のレベルに達したと思ったら、自分としてこうしたいという対応をしてみることです。そしてその結果どのような変化が自分や自分の周囲に生まれたかを考えてみることが大切だと思います。
もう一つは不安を受け入れるということです。不安は不安、それは抱えていかざるを得ないという考えを出発点とするのです。不安をもつのは当たり前。でもだからこそ、自分で楽しむ一歩を踏み出してみるという発想です。(183~184頁)
何れのアプローチも、不安を取り消すべき問題として対処しようとしないという点が興味深い。不安を抱くことは心地よいことではなく、だからこそ取り消すべき問題として捉えてしまう。しかし、不安は軽々になくなるものではなく、解消しない問題を抱えてままでは気分がいつまでも優れない。だからこそ、不安は所与のものとして置いておき、他の対象に目を向けるという著者の助言に目を傾けた方が良いのではないだろうか。
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