海外の小説というものに苦手意識を持っていたが、本作は面白かった。訳文独特の言い回しを読んでいると少し居心地の悪さを感じる部分もある。一人の人物を愛称で呼んだり、ファーストネームで呼んだり、属性で読んだりと、慣れない身には混乱させやすい箇所もある。それでも話の展開には惹きつけられる何かがあったと思う。
ずっと相容れなそうに思える人物同士が惹かれ合い、問題なくくっつきそうな人物たちが悲劇的に別れても最後にはくっつく。ベタといえばベタなのだが、面白く読めてしまうのだから不思議だ。
話の展開だけを楽しんでいると、それだけで終わってしまう。すんなりと読めることは、小説のひとつの素晴らしさだとは思うが、味気なく感じることもある。ただ、本書の場合は、同時期に並行して「100分de名著」で解説を見ながら読めたので、素人としては全く気付かない視点を学びながら読み進めることができるという僥倖があった。
すべては、あなたのおかげなんです!あなたはわたしに、最初のうちは実につらいが、とてもためになる教訓を教えてくれました。わたしはあなたに高慢の鼻を折られたが、これは当り前のことです。わたしは、かならずうけいれてもらえるものと思って、あなたに近づきました。ところが、あなたは、わたしという男は、取りいるだけの価値のある婦人に取りいる資格のない男だということを、教えてくれました(244~245頁)
わかるようでわからない。複雑にして難解な文章であるが、その発話の主体である人物の人となりから、なんとなく類推ができ、そこから何か感じ取れるものがあるから不思議である。西洋文学と呼ばれるものを読むのも、日本の小説とはまた異なる趣があり、いいものだと思った。
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