2017年9月24日日曜日

【第755回】『ローマ人の物語2 ローマは一日にして成らず(下)』(塩野七生、新潮社、2002年)

 ローマ建国から約五百年間を経て、イタリア半島の統一がひとまずは為されたとされている。その間を著述したハードカバー第一巻の後編が本作である。

 私見であるが、説明が難しい部分もあるし、世界史の教科書のようなやや退屈な箇所もある。しかし、立ち止まることなくテンポよく読み進めることができる構成であり、また受験勉強ではないのでそうした読み方が許されるのが、大人の読書のありがたさであろう。

 時代を超えて、偉大な人物は偉大であることによって、自身では思いもよらない毒を周囲にまき散らしてしまう存在であるのか。(71頁)

 ソクラテスを描写した箇所である。偉大といわれる現代の企業のトップを何人か思い浮かべてしまった。彼(女)らは、自身のミッションを信じているために、それを実現するためには他者に与える影響というものは考えないのであろう。だからこそ、非常に優秀であるトップは、時として周囲の存在に対して極めて厳しい側面を持ってしまうのではないか。

 ローマ人は、保守的であったというのが定説になっている。だが、真の保守とは、改める必要のあることは改めるが、改める必要のないことは改めない、という生き方ではないだろうか。(121頁)


 ネオコンサバティヴを信奉する方々に読んでいただきたい至言である。保守主義とは異なる考え方を持った身として、偏った思想として保守主義を否定するのではなく、保守主義の持つ可能性についてじっくりと考えてみたいと思った。


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